公的給付等を受けている場合、免れますか?
公的給付を受けている場合、婚姻費用はどう考慮されますか?

公的給付等

1 公的手当を受けている場合

 収入認定の際に公的扶助は考慮しない
 ・子ども手当・児童手当
 ・就学支援金制度

 

福岡高等裁判所那覇支部 平成22年(ラ)第28号 婚姻費用分担の審判に対する即時抗告事件 平成22年9月29日「1 子ども手当は,次代を担う子どもの育ちを社会全体で応援するとの観点から支給されるものであり,夫婦間の協力扶助義務に基礎を置く婚姻費用の分担額には影響しない
2 妻が高校生と中学生の子を監護養育しているところ,子の通う公立高等学校の授業料はそれほど高額ではなく,妻の生活費全体に占める割合もさほど高くはないものと推察されるなどの事情の下では,公立高等学校に係る授業料の不徴収は,夫が分担すべき婚姻費用の額に影響を及ぼすものではない。」

 

東京高等裁判所 平成15年(ラ)第670号 子の監護に関する処分審判に対する即時抗告事件 平成15年8月15日「関係法規の規定等から導かれた公租公課の収入に対する標準的な割合及び統計資料に基づき推計された費用の収入に対する標準的な割合から算定される抗告人及び相手方の各基礎収入並びに生活保護の基準及び統計資料に基づき推計された子の生活費の割合を基に,抗告人が平成15年3月31日限り○△○△との間の雇用契約の終了により無職となっていること,抗告人及び相手方の現在の収入(負担能力)及びその今後の見通し,両者間の損害賠償を巡る争いの状況等を加味して考慮すれば,上記の分担額は,平成13年9月1日から平成15年3月分までは1か月2万5000円,同年4月以降は1か月2万円とするのが相当である。」

 

横浜家庭裁判所 平成23年(家)第2957号 婚姻費用分担申立事件 平成24年5月28日出産育児一時金は,少子化対策の一環等として支給される公的補助金であり,それが支給される以上,出産費用はまずそれによって賄われるべきであるから,相手方が出産のための費用として申立人に交付した金員から,出産育児一時金では不足する出産費用のうち相手方が負担すべき金員を控除した金額は,婚姻費用の前払とみなすのが相当である。」

 

2 生活保護を受給している場合

 生活保護は収入として考慮されない。

 

名古屋高等裁判所 平成3年(ラ)第109号 婚姻費用分担申立て却下決定に対する即時抗告事件 平成3年12月15日「すなわち,(1)生活保護法による生活保護は,国が生活に困窮する国民に対し困窮の程度に応じ必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長する目的で行われるものであり,原則として世帯を単位として行うとともに,民法に定める扶養義務者の扶養等に劣後して行われるものとされているのであるから,民法に定める婚姻費用分担義務を考慮するにあたり,生活保護法による生活保護の受給を抗告人の収入と同視することはできず,原審は,まず,この点において法律解釈を誤ったものというべきである。また,(2)相手方は,婚姻関係にある抗告人に対し自己と同程度の生活を保障するいわゆる生活保持の義務を負うものであって,仮に原審がいうように相手方は生活を維持するのが精一杯であるとしても,そのこと自体,何ら相手方の扶助義務ないし婚姻費用分担義務を消滅させる筋合のものでないことは明らかであり,相手方の収入又は可処分所得を検討しないまま相手方の右義務を否定することは相当ではなく,原審は,この点においても判断を誤っているというべきであるが,一件記録を調査しても,その内容を判断するために必要な相手方の収入又は可処分所得を窺うことができないことは,前記のとおりである。」

 

東京高等裁判所 昭和63年(ラ)第126号 審判前の保全処分取消の審判に対する即時抗告申立事件 昭和63年11月22日「そこで,前記昭和61年(家ロ)第1001号審判前保全処分(金銭支払仮処分)申立事件につき昭和61年4月11日にされた審判を取消すべきか否かを検討するに,抗告人は前示のとおり右審判後に昭和61年7月から生活保護法による扶助として月額15万ないし18万円余(但し,同年7月分は11万円余)の給付を受けるようになったが,生活保護法4条1項によれば,生活困窮者はその利用し得る資産,能力その他あらゆるものをその最低限度の生活維持のため活用することを要するものとされ,同条2項によれば,民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助はすべて同法による保護に優先して行なわれるべきものとする旨定められており,夫婦間の婚姻費用の分担が右にいう扶助に当たることはいうまでもない。そうすると,右審判後に抗告人が生活保護法による扶助を受けたとしても,これによつて夫婦間の婚姻費用分担の義務及びその必要性が消滅したものということはできず,前示のとおり相手方には昭和61年,昭和62年に病気による減収がみられるものの,他方,貸家からの賃料収入もあることその他前示認定の諸般の事情を考慮すれば,依然として右審判に定められた婚姻費用を支払うべき義務を負うものというべく,右審判を取消すべき事情が生じた旨の相手方の主張は採用することができない。」

 

3 妻・夫が共に年金生活者の場合

 年金を収入とみなして算定するが、職業費がかかっていないので、職業費を控除せずに基礎収入を算定する必要があります。

 

4 夫が失業保険を受給している場合

 夫が失業保険を受給中の場合であっても、婚姻費用や養育費の支払い義務を免れません

 

5 夫が所得補償保険給付を受給している場合

 夫が給与収入と所得補償保険給付を同時に得ている場合は、公租公課等の負担状況が異なることがあるため、各収入ごとに基礎収入割合を設定した上で基礎収入を算定します。

馬場総合法律事務所

弁護士 馬場充俊

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