【夜間や土日祝も法律相談可】【相談のみのセカンドオピニオン大歓迎】【24時間メール受付】

遺産分割

遺産分割調停と審判の実務

第1 段階的進行モデル

 各段階において、合理的な合意を形成するなど、段階的に手続を積み上げることにより、調停の成立または審判による終局解決を目指す→表

 

第2 相続人の範囲(遺産分割の当事者)に関する留意点

 

1 遺産分割の当事者を確認する重要性

  (1)遺産分割の当事者となるべき者を除外した場合

→原則無効になります

  (2)相続人ではない者を含めてされた遺産分割

→少なくとも相続人では無いとされた者についての分割は無効。全体無効とする裁判例・学説あり
 

2 相続人多数事案の場合

   相続分の譲渡・放棄の活用
   相続分譲渡証書の書式に注意・・・相続分の譲渡は、債務引き受けの一面もあるため契約なので、譲渡人の単独行為ではない。したがって、証書の書式も契約書の形式である必要がある(譲渡人・譲受人連名)。

 3 法定相続分についての主要な改正等→かな〜り昔の相続事案で法定相続分の計算を間違うことが多い
  (1)配偶者の相続分(昭和56年1月1日以降で現在の相続分に改正。それ以前は少ない。)
  (2)非嫡出子の相続分

    ・平成25(2013)年9月5日以降に発生した相続に対しては、新法が適用され、嫡出子と非嫡出子の相続分は同じ
    ・平成15年3月31日判決→平成12(2000)年9月の時点で旧規定は合憲
    ・平成25年3月31日決定→平成13(2001)年7月の時点で旧規定は違憲
      →既に成立した調停・審判や協議のやり直しの必要は無い
      →空白期間はグレーゾーンでどのように判断されるかは分からない

  (3)兄弟姉妹の再代襲

    昭和55年12月31日以前は認められていた。それ以降は現在と同様認められていない。

 4 令和3年改正民法との関係(管理人の当事者適格)
  (1)所在等不明共有者がいる場合

・・・所有者不明土地・建物管理人選任が可能になりました
    →対象となる特定の土地・建物の管理処分権は管理人に専属するものの、その他の遺産についての管理処分権なし
     =遺産分割の当事者適格なし

  (2)管理不全土地・建物がある場合

=管理不全土地・建物管理人の選任が可能になりました
    →対象となる特定の土地・建物の管理処分権の専属なし=遺産についての管理処分権もないため、遺産分割の当事者適格なし

 

第3 遺産の範囲に関する留意点

 1 遺産分割は積極財産のみ対象となり相続債務は各共同相続人に当然に承継される(判例)
 2 分割の対象となる財産は何か
  (1)調停でも審判でも当然に分割の対象となるもの 

預貯金債権(H28判例)など

  (2)相続人全員が合意すれば、調停・審判で分割の対象となるもの

    例)貸金債権・不当利得返還請求権(法定相続分に応じて当然に分割するのが原則)
      相続開始後に生じた相続不動産の賃料

  (3)相続人全員が合意すれば、調停では扱えるもの

    例)相続債務、葬儀費用、遺産管理費用

 3 利息や果実
Q相続開始後に預金口座に入金された金員や相続開始後の利息は相続財産に含まれるか(遺産分割の対象となるか)

   →「被相続人名義の預貯金債権について・・・その全体が遺産分割の対象となる」(H28判例 鬼丸かおる裁判官補足意見)

   Q相続財産から生じた相続開始後の果実は遺産分割の対象となるか

   例)相続開始後に生じた相続不動産の賃料、遺産たる株式の相続開始後の配当金
   →遺産分割の対象とならない。共同相続人全員の同意があれば対象とできる。

 4 預貯金債権の払い戻し手続(平成30年改正相続法)
  (1)小口の資金需要 

・・・裁判所の判断を経ることのない遺産分割前の預貯金の払い戻し制度(民909の2)

  (2)大口の資金需要

・・・預貯金債権の仮分割の仮処分における従来の発令要件を緩和(家事事件手続法200V)
    →令和元年7月1日(施行日)以前に開始した相続にも適用

 5 割合的「相続させる」遺言がある場合

  =つまり「相続人Aに遺産の10分の3を、相続人Bに遺産の10分の2を・・・相続させる」といった、遺言に示された一定の割合に従って遺産を「相続させる」旨定めた遺言がある場合、分割済みの遺産となるか(遺産分割手続の対象となり得ないことになるか)

  (1)特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」遺言の場合

・・・法的性質は遺産分割方法の指定(民908条)。そして、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからしめたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継(最高裁H3/4/19判例)。→つまり、遺産分割する余地なし。
   →平成30年改正相続法(1046条1項)ではこれを「特定財産承継遺言」と定義。

  (2)では、割合的「相続させる」遺言の場合は?

・・・これは「特定財産承継遺言」ではない。「相続分の指定」と解される。この場合も遺産分割手続をする余地なしとされる。記載された割合の物権法上の共有(所有権以外の場合は準共有)とされる。

 6 なぜ遺産分割調停において範囲合意をするのか

・・・遺産分割事件は、基本的には、相続人が本来任意に処分することを許された遺産に対する相続分を具体化するための手続であり、私的な財産紛争であるから、当事者の合意を可能な限り尊重する当事者主義的運用となっている。

 7 範囲合意(中間合意)の効力
  (1)中間合意には信義則に基づき当事者に対する拘束力がある。
  (2)範囲合意ができなかった場合どうするか

→範囲合意ができない部分について訴訟を行う。分割の審判をしても判決によってその部分が否定されればその部分において無効となる。
→調停を取下げ勧告されるか調停をしない措置(なさず)

 8 遺産分割に付随した法的紛争

  特に問題となるのは使途不明金→使途不明金問題が障害となって調停不成立となると審判に移行するが、使途不明金問題は審判では判断の対象外とされる。予想外の審判がなされてしまっても、その時点では相手方の同意がなければ審判申立を取下げることもできず(家事82A但し書き)、仮に即時抗告申立をしても抗告審において使途不明金問題を解決できない。訴訟提起をしても、先に遺産分割審判が確定してしまうと、遺産分割調停段階では使途不明金について知らぬ存ぜぬと白を切っていた共同相続人が使途不明金訴訟のなかでは被相続人からの贈与だと主張し仮にそれが認められてしまうと、既に確定した審判を蒸し返して特別受益の主張もすることができず、訴訟でも使途不明金は返ってこずとなってしまう。また、不法行為や不当利得にも消滅時効があるので訴訟を先行するべき。

 

要約すると「共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである」と判示された最高裁判例です。定期預金、定期積金、普通預金、ゆうちょの定期貯金について、相続により当然分割されないことが最高裁判決で出そろいました。?普通預金共同相続された普通預金債権が相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるものではないことは最大決...

前回記事に引き続き、税法の最近の判例の抜粋です。私道に関する相続評価、遺産分割協議の合意解除について更正請求ができるかの二点です。?東京地裁平成27年7月16日私人が所有する道という広い意味で私道をとらえた場合、各敷地所有者が共有する道で、複数の建物敷地の接道義務を満たすために建築基準法上の道路とされているものもあり、他方、宅地の所有者が事実上その宅地の一部を通路として一般の通行の用に供しているも...

一般の方にとって、遺産分割調停よりも審判の方がなじみがないと思われます。調停が不成立で終了した場合には、調停の申立の時に遺産分割の審判の申立てがあったものとみなされ、遺産分割事件は審判手続に移行し、審判手続が開始し(家審26条)、審判の申立後、職権で調停に付された調停が不成立で終了した場合は、中止されていた審判手続が再開します。申立後の審判手続の開始は、当然に行われるものであるから、当事者の申立て...

最高裁判所大法廷平成28年12月19日決定民集70巻8号2121頁は、「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる」と判示し、判例変更となりました。@では、可分債権一般も遺産分割の対象となるのか?岡部喜代子裁判官の補足意見は「当然に分割されると考えられる可分債権…については…具体的相続分の算定...

共同相続人間で相続分の譲渡がされたときは,積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転し,相続分の譲渡に伴って個々の相続財産についての共有持分の移転も生ずるものと解される。 そして,相続分の譲渡を受けた共同相続人は,従前から有していた相続分と上記譲渡に係る相続分とを合計した相続分を有する者として遺産分割手続等に加わり,当該遺産分割手続等において,他の共同相続人に...

はじめに約40年ぶりに相続に関する規律が改正され、平成30年7月6日、民法(相続関係)改正法が成立し、同月13日に交付されました。配偶者の居住権の保護(2020年4月1日施行)@配偶者短期居住権夫名義の自宅に夫婦で居住していたところ、夫が死亡した場合、妻は遺産分割により居住建物の帰属が確定する日までなどの一定期間、無償で自宅に居住することができます。A配偶者居住権同居配偶者に限って、終身又は一定期...

馬場総合法律事務所
弁護士 馬場充俊
〒604-0024 
京都市中京区下妙覚寺町200衣棚御池ビル2階
TEL:075-254-8277 FAX:075-254-8278
URL:https://www.bababen.work
トップへ戻る