【相続・相談事例】遺留分減殺請求をされたので、弁償する金額を提示したのに、無視されているケース

【相続・相談事例】遺留分減殺請求をされたので、弁償する金額を提示したのに、無視されているケース

●相談前

例えば、母親が長男に全ての財産を相続させる公正証書遺言を残していたのであるが、次男から長男に「遺言は無効だ」と主張され、それとあわせて予備的に「遺留分減殺請求を行使する」と言われたケースを想定します。この時に、結局、遺留分で弁償する金額が定まらないまま、また遺言の無効の裁判もおこされないまま、いたずらに時間が経ったときには、長男はどう対処すればいいでしょうか?

●相談後

最判平成21年12月18日(債務不存在確認等,遺言無効確認等請求事件)は、以下のとおり判示する。
「遺留分減殺請求を受けた受遺者等が民法1041条所定の価格を弁償し、又はその履行の提供をして目的物の返還義務を免れたいと考えたとしても、弁償すべき額につき関係当事者間に争いがあるときには、遺留分算定の基礎となる遺産の範囲、遺留分権利者に帰属した持分割合及びその価格を確定するためには、裁判等の手続のいて厳密な検討を加えなくてはならないのが通常であり、弁償すべき額についての裁判所の判断なくしては、受遺者等が自ら上記価格を弁償し、又はその履行の提供をして遺留分減殺に基づく目的物の返還義務を免れることが事実上不可能となりかねないことは容易に想定されるところである。弁償すべき額が裁判所の判断により確定されることは、上記のような受遺者等の法律上の地位に現に生じている不安定な状況を除去するために有効、適切であり、受遺者等において遺留分減殺に係る目的物を返還することと選択的に価額弁償をすることを認めた民法1041条の規定の趣旨にも沿うものである。
そして、受遺者等が弁償すべき額が判決によって確定されたときはこれを速やかに支払う意思がある旨を表明して、上記の額の確定を求める訴えを提起した場合には、受遺者等がおよそ価額を弁償する能力を有しないなどの特段の事情がない限り、通常は上記判決確定後速やかに価額弁償がされることが期待できるし、他方、遺留分権利者においては、速やかに目的物の現物返還請求権又は価額弁償請求権を自ら行使することにより、上記訴えに係る訴訟の口頭弁論終結の時と現実に価額の弁償がされる時との間に隔たりが生じるのを防ぐことができるのであるから、価額弁償における価額算定の基準時は現実に弁償がされる時であること(最高裁昭和50年(オ)第920号同51年8月30日第二小法廷判決・民集30巻7号768頁参照)を考慮しても、上記訴えに係る訴訟において、この時に最も接着した時点である事実審の口頭弁論終結の時を基準として、その額を確定する利益が否定されるものではない。
以上によれば、遺留分権利者から遺留分減殺請求を受けた受遺者等が、民法1041条所定の価額を弁償する旨の意思表示をしたが、遺留分権利者から目的物の現物返還請求も価額弁償請求もされていない場合において、弁償すべき額につき当事者間に争いがあり、受遺者等が判決によってこれが確定されたときは速やかに支払う意思がある旨を表明して、弁償すべき額の確定を求める訴えを提起したときは、受遺者等においておよそ価額を弁償する能力を有しないなどの特段の事情がない限り、上記訴えには確認の利益があるというべきである。
遺留分減殺請求権の債務不存在確認訴訟の管轄は、被告の住所地か被相続人の最後の住所地(民訴法5条14号)です。

馬場総合法律事務所
弁護士 馬場充俊
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