遺言書の文例
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遺言書の文例

配偶者及び子への相続

妻及び子への相続分を指定する場合

私には、妻と長男・長女がいます。妻に法定相続分より多く相続分を与えて、子の相続分を減らしたい。

→「遺言者甲は、次のとおり各相続人の相続分を指定する。
 妻 乙 12分の7
 長男 丙 12分の3
 長女 丁 12分の2」

※相続分の指定は、遺留分に関する規定に違反することはできません(民902①但し書き)。遺言の内容が遺留分の規定に反する場合、遺留分減殺請求をされた場合は応じなければなりません。
※仮に、共同相続人のうち相続分の指定をしていない者がいた場合はその者は法定相続分によるものとなります(民902②)。

 

妻に全てを相続させ、子には相続させない場合

私には、妻と長男・長女がいます。妻に全財産を相続させたい。

→「1 遺言者は、下記の財産その他遺言者が所有する一切の財産を、妻の乙に相続させる。(省略)
 2 丙、丁は、遺留分減殺請求をせず、乙の生活を助けてやってほしい。」

※遺留分を有する丙・丁に一切相続させないという内容となっていますので、2項を規定し、トラブルを避けたいと考えている遺言です。

 

妻と同居している長男に多く相続させる場合

私には、妻と長男・長女がいます。不動産と預貯金の大部分を長男に相続させたい。

→「1 遺言者は、遺言者の有する下記の財産を、遺言者の長男丙に相続させる。
(1)土地
所在 あ県あ市・・・
地番 ・番
地目 ・・
地積 ・・平方メートル
のうち持分3分の2
(2)建物
所在 あ県あ市・・・
家屋番号 ・番
種類 ・・
構造 ・・
床面積 ・・平方メートル
のうち持分3分の2
(3)その他相続人が相続時に所有する一切の財産
  2 遺言者は、遺言者の有する下記の財産について妻の甲に相続させる。
(1)土地
所在 あ県あ市・・・
地番 ・番
地目 ・・
地積 ・・平方メートル
のうち持分3分の1
(2)建物
所在 あ県あ市・・・
家屋番号 ・番
種類 ・・
構造 ・・
床面積 ・・平方メートル
のうち持分3分の1
  3 遺言者の死亡と同時若しくは遺言者の死亡以前に遺言者の長男乙が死亡した場合は、第1条記載の財産全てを長男乙の妻である丁に遺贈する。」

 

長男に多く相続させ、妻と同居してもらう場合

私には妻と長男・長女がいますが、長男に多く相続させる代わりに、自分の死後は妻と同居してもらいます。

→「長男乙は、第●項の財産を相続することの負担として、妻甲が死亡するまで同人と同居し、必要な生活費を支出し、毎日の食事を準備する等して扶養することとする。」
 「遺言執行者は、長男乙への遺言内容を実現し、甲との同居及び甲の扶養が十分に履行されるよう監督するものとする。」

※これは「負担付相続」といいます。負担付相続を受けた者は、負担付相続をさせる遺言による利益を受けるか、放棄するかの選択ができます(民986①)。
※長男乙が相続をしたものの甲への扶養義務を果たさないという事態もあり得ますが、ほかの相続人は相当の期間を定めて履行を催告することができ、その期間内に履行ができない場合は、その負担付相続に係る取消しを家庭裁判所に請求できると考えられます(民1027準用)。

 

妻が認知症のため、長男に相続させ、その介護を任せる場合

→「長男乙は、第●項の財産を相続することの負担として、妻甲が存命中の間、必要な介護を行う者とする。」

※負担付き遺贈においては、受遺者が遺贈の目的額を超えない限度においてのみ負担した義務を履行する責任を負う(民1002①)ので、相続財産に比して高額な負担をしてしまうと、妻甲の介護がなされない可能性が生じます。

 

妻が先に死亡したときは、自宅を長男に相続させる場合

→「万一、遺言者より前に妻甲が死亡したときは、遺言者は、前条記載の財産を遺言者の長男甲に相続させる。」

 

遺留分減殺請求権を行使しないことを求める定めをおく場合

※相続放棄と異なり、相続開始前であっても、家庭裁判所の許可を受けて、遺留分の放棄をすることができます(1043①)。また、相続開始後は、家裁の許可無く遺留分の放棄ができます。

 

妻に多く相続させ、子から遺留分減殺請求権を行使された場合は預貯金から減殺させる場合

→「もし長男乙から遺留分減殺請求があったときは、あ銀行い支店普通預金口座番号12345の甲名義の預金債権から減殺するものとする。」

 

遺留分減殺請求権を行使された場合に相手方の順序を指定したい場合

→「次男丁から遺留分減殺の請求があったときは、妻甲の相続すべき財産については減殺せず、まずは長女乙に相続させる財産から、次いで長男丙に相続させる財産から減殺すべきものと定める。」

※遺贈よりも先に生前贈与を減殺請求の対象とすることはできない。

 

妻が再婚したときは財産を相続させない場合

→「妻乙が再婚した場合、前条記載の土地、建物及び動産は長男乙に相続させる。」

 

財産をすべて換価して債務を清算し、残りの金額を妻子に分配する場合

私は、父から引き継いだ株券等の有価証券、書画骨董などを多数所有していますが、借金も抱えているので、私の死後はこれらの財産を全て換価して債務を精算し、残額を妻と娘に配分したい。

→「遺言者は、遺言者の有する財産をすべて換価し、その換価金の中から遺言者が負担していた一切の債務を弁済し、かつ、残りの金額を妻乙に2分の1、長女丙に2分の1ずつ配分する。」

※換価金を相続人以外の者に配分することも可能です。この場合には、その者に対する遺贈という扱いです。

 

特別受益の持ち戻しを免除する遺言書

→「遺言者は、長男甲に対する別紙物件目録記載1の土地及び同目録記載2の建物の贈与について、特別受益としての持戻しを免除し、その贈与の額を、相続財産に加算せず、長男甲の相続分から控除しないものとする。」

 

行方不明者の所在が分かったときに遺産を相続できるようにする場合

→「遺言者の次男丙が生きていて、所在が判明したときは、長男甲は、現金1,000万円を、長女乙は、現金500万円を、次男丙に対し、相続分として引き渡すものとする。」

 

長女の夫に賭博癖があるため、財産をすべて長男に相続させ、定期金を長女に送金させる場合

このまま長女に財産を相続させても長女の夫に処分されてしまう可能性が高いためこのような遺言を作成したい。

その方法として①負担付遺贈の遺言書、②長女を受益者とする公正証書遺言が考えられます。

→①「遺言者は、遺言者の有する以下の不動産を遺言者の長男甲に遺贈する。その負担として、受遺者甲は、遺言者の長女乙に対し、生活費として毎月末日限り金10万円を支払う。」

→②「遺言者は、遺言者の有する次の不動産につき、次のとおり信託する。
(1)信託の目的 次の不動産を信託財産として管理し、後記(6)③の生活資金を給付すること。(省略)
(2)受託者 遺言者の長男甲(平成1年2月3日生)
(3)受益者 遺言者の長女乙(平成4年5月6日生)
(4)信託期間 受益者が信託を引き受けた日から10年間。ただし、信託期間中に受益者が死亡したときは終了する。
(5)信託終了の際の権利帰属者 受益者。受益者死亡の場合は、その相続人
(6)管理に必要な事項
①前記信託不動産について、信託による所有権移転登記及び信託の登記手続をすること。
②受益者は、信託不動産を他に賃貸し、既に賃貸しているものについては賃貸人の地位を承継すること。
③受益者は、信託不動産から生ずる賃料その他の収益から、毎月末日限り金10万円を長女乙に支払う。
④期間満了により終了したときは、受益者は、信託不動産を権利帰属者に引き渡し、所有権移転登記手続をすること。また、賃貸借関係、保険関係その他一切の関係を引き継ぐこと。

 

自分を虐待した子を相続人から廃除する場合

廃除は、被相続人に対し虐待を行った場合、被相続人に対し重大な侮辱を加えた場合または推定相続人に著しい非行があった場合に、家庭裁判所に請求を行うことができます。そして、廃除の請求は、被相続人の生前に行うことができますが(民892)、生前に行うことによりかえって虐待が行われる恐れがある場合は、遺言によって廃除を行うことができる。
受遺者への不動産の所有権移転についての登記申請は、遺言執行者がいれば受遺者との共同申請で行うことができますが、遺言執行者がいない場合、相続人と受遺者との共同申請で行わなければなりません。そのため、不動産の遺贈を行う場合には、遺言執行者の選定をしておくべきです。
また、相続人の廃除または廃除の取消しを遺言によって行う場合には、遺言執行者の指定が必ず必要となります。遺言執行者は、遺言の効力が生じた後、遅滞なく、家庭裁判所に推定相続人の廃除の請求をしなければなりません。ただ、遺言による廃除は、被相続人の死亡後、家庭裁判所に請求を行う必要があり、その手続の中で廃除事由の有無の争いが長引くこともあるので、生存中に調停または審判を求めて生前に廃除をしておくべきです(民892)。

 

その他の親族への遺贈

長男の死後も世話をしてくれた長男の妻に財産を渡す場合

→「遺言者所有の財産全部を長男故丙の妻であった戊に遺贈する。」

 

子には相続させず孫に財産を渡す場合

私には、相続人として、長男と既に死亡した長女の息子(孫にあたる)がいますが、長女の息子に全て相続させたいと思う。

→「私の財産は、全て長女故丙の息子の戊に相続させる。」

 

割合的包括遺贈

「遺言者は、その所有する財産全てを次の割合で次の者たちに遺贈する。
遺言者の元妻である◎◎◎◎(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生) 4分の3
元妻◎◎◎◎の連れ子である□□□□(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生) 4分の1」

※遺贈する場合には、遺言書に受遺者の氏名・住所・遺贈する財産を明確にしておく必要があります。

 

親族以外の者への遺贈

遺贈は単独行為であり、受遺者の同意・承諾無く遺贈者の死亡により効力が発生する反面、死後、受遺者が遺贈を放棄することができます(民986)。

 

死亡した子を認知する場合

私は、かつて、婚姻関係の無い女性との間に子をもうけたが、現在に至るまで認知はしていない。その子は昨年死亡したが、息子が一人いるようです。私が死亡したら、私の財産をその息子に相続させたい。

→「次の死亡者は、遺言者の甲と乙との間の子であるから、これを認知する。
(1)死亡者
本籍 
氏名 乙(令和2年3月4日死亡)
(2)上記死亡者の直系卑属
本籍 
氏名 丙(平成4年5月6日生)」

※父または母は、死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り認知することができる。ただ、その直系卑属が成年である場合は承諾が必要です(民782)。

 

遺産分割の禁止

被相続人は、遺言で遺産全体、または遺産のうちの一部の財産の分割を禁止することができるが、その期間は相続開始から最長5年です。
遺産分割の禁止は遺言でする必要があります。

 

不動産を長男に相続させ、他の子に代償金を支払う場合

→「1 遺言者が有する下記不動産は、長男甲が取得する。
(1)土地 (以下略)
 2 長男甲は、次男乙及び三男丙に対して、代償金を支払うものとする。」

※被相続人は、遺産分割の方法を指定することができ、遺産を各相続人にどのように分配するかの方法を決めることができる。現物分割、価格分割、代償分割、共有による方法があります。

 

長男に住宅ローンと抵当権の負担を相続させる場合

→「遺言者は、あ銀行い支店からの借入金●円の債務を長男甲に相続させる。」
 「遺言者は、前項の債務を被担保債権とする後記不動産目録記載の不動産に対して設定されている抵当権の負担を長男甲に相続させる。」

※抵当権の相続は、不動産所有権を相続取得するに伴い、抵当権の負担もそのまま承継することになります。
※住宅借入金については、相続人全員が承継することになるので、抵当権設定の債務者覧について、相続人全員を債務者とするよう抵当権設定登記変更登記手続をする必要があります。ただ、銀行実務上は、事案によっては、相続人全員を債務者とする旨登記した上で、甲と債務引受契約を締結し、長男のみを債務者とする旨の登記に変更する場合もあります。

 

財産の一部を社会福祉法人や公共事業に寄附する場合

→「・遺言者は、社会福祉法人あ会に、現金3,000万円を遺贈する。
  ・遺言者は、下記不動産を、い駅前再開発事業に供するため、遺言者の所在地であるう市に遺贈する。
  ・残余の財産については、妻甲と長男乙に、その相続分に従ってそれぞれ相続させる。」

※公共事業に寄附すると相続税がかからないというメリットがあります。

※公共事業に寄附する要件

①事業を営む者が、遺贈された財産を事業のために確実に使用することが明らかであること
②公共事業が、特定の者とその家族や親戚のみで運営されていないこと
③遺贈された後2年以内に実際にその財産を事業のために使用すること等
※判例は、受遺者の範囲が、国、地方公共団体等の公益目的の団体に限定されている場合は、具体的な受遺者の選定を遺言執行者に委託する趣旨の遺言を有効としております(最判平5・1・19民集47・1・1)。

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