有責配偶者の離婚請求
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有責配偶者の離婚請求

一方の配偶者が不貞行為をしたために夫婦関係が破たんした場合で、不貞行為をした側の有責配偶者から民法770条1項5号所定の事由による離婚請求が許されるケースをまとめたいと思います。

 

考慮要素

判例(最高裁昭和六一年(オ)第二六〇号同六二年九月二日大法廷判決・民集四一巻六号一四二三頁参照)は以下の場合は離婚請求が認められるとしています。

  1. 有責配偶者の責任の態様・程度
  2. 相手方配偶者の婚姻継続についての意思及び請求者に対する感情
  3. 離婚を認めた場合における相手方配偶者の精神的・社会的・経済的状態及び夫婦間の子、殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況
  4. 別居後に形成された生活関係、たとえば夫婦の一方又は双方が既に内縁関係を形成している場合にはその相手方や子らの状況等
  5. 時の経過がこれらの諸事情に与える影響

 

有責配偶者からの離婚請求が認められるケースはどのような場合ですか?どれくらいの別居期間が必要になりますか?

下記の裁判例・判例が参考になります。

 

東京高判平成14年6月26日

夫と妻とは、もともと会話の少ない意思の疎通か不十分な夫婦であったところ、妻と外国人男性との不倫疑惑で夫婦の溝が大きく広がり、更に夫が女性Aと婚姻外の男女関係を続けた中で互いに夫婦としての愛情を喪失して別居に至ったもので、別居後既に6年を超えているところ、その間夫婦関係の改善は全くみられず夫の離婚意思は極めて強固であることが明らかであって、夫と妻の婚姻関係は完全に破綻し、今後話合い等によってこれを修復していくことは期待できないものと認められる。
なお、妻が外国人男性と不貞行為があったかについては本件全証拠によるもこれを認めるに足りないが、上記認定の限りにおいても、夫が妻において外国人男性と親密な関係にあるのではないかとの疑念を抱いたことは無理からぬことであり、妻の外国人男性との交遊は夫との夫婦関係の悪化を促進させる要因となったものと認められる。
夫は有責配偶者であると認められるが、別居期間は6年以上経過しているところ、夫婦はもともと会話の少ない意思の疎通が不十分な夫婦であって、別居前も妻と外国人男性との交遊に夫の側からみて疑念を抱かせるものがあり、そのころから夫婦間の溝が大きく広がっていたこと、二子とも成人して大学を卒業しているなど夫婦間に未成熟子がいないこと、妻は勤務して相当の収入を得ているところ、離婚に伴う給付として妻に現在同人が居住している自宅建物を分与し同建物について残っているローンも完済するまで支払続けるとの意向を表明していることなどの事情に鑑みると、その請求が信義誠実の原則に反するとはいえない。

 

最判平成6年2月8日

妻が夫と別居してから原審の口頭弁論終結時(平成五年一月二〇日)までには既に13年11月余が経過し、双方の年齢や同居期間を考慮すると相当の長期間に及んでおり、夫の新たな生活関係の形成及び妻の現在の行動等からは、もはや婚姻関係の回復を期待することは困難であるといわざるを得ず、それらのことからすると、婚姻関係を破綻せしめるに至った夫の責任及びこれによって妻が被った前記婚姻後の諸事情を考慮しても、なお、今日においては、もはや、妻の婚姻継続の意思及び離婚による妻の精神的・社会的状態を殊更に重視して、夫の離婚請求を排斥するのは相当でない。
妻が今日までに受けた精神的苦痛、子らの養育に尽くした労力と負担、今後離婚により被る精神的苦痛及び経済的不利益の大きいことは想像に難くないが、これらの補償は別途解決されるべきものであって、それがゆえに、本件離婚請求を容認し得ないものということはできない。
そして、現在では、四人の子のうち三人は成人して独立しており、残る三男Dは親の扶養を受ける高校二年生であって未成熟の子というべきであるが、同人は三歳の幼少時から一貫して夫の監護の下で育てられてまもなく高校を卒業する年齢に達しており夫は妻に毎月一五万円の送金をしてきた実績に照らして子の養育にも無関心であったものではなく夫の妻に対する離婚に伴う経済的給付もその実現を期待できるものとみられることからすると、未成熟子である子の存在が本件請求の妨げになるということもできない

 

最判平成2年11月8日

別居期間は約八年ではあるが、夫は、別居後においても妻及び子らに対する生活費の負担をし別居後間もなく不貞の相手方との関係を解消し、更に、離婚を請求するについては、妻に対して財産関係の清算についての具体的で相応の誠意があると認められる提案をしており、他方、妻は、夫との婚姻関係の継続を希望しているとしながら、別居から五年余を経たころに夫名義の不動産に処分禁止の仮処分を執行するに至っており、また、成年に達した子らも離婚については婚姻当事者たる妻の意思に任せる意向であるというのである。そうすると、本件においては、格別の事情の認められない限り、別居機関の経過に伴い、当事者双方についての諸事情が変容し、これらのもつ社会的意味ないし社会的評価も変化したことが窺われるのである。

 

東京高判平成元年11月22日

夫と妻とは昭和12年2月1日婚姻届をし、夫が昭和17年から昭和21年まで南方で従軍した約4年間を除き平穏に同居生活を続けてきたが、妻が昭和二四年ころ夫と松子との間に継続していた不貞な関係を知ったのを契機として不和となり、同年8月ころ夫が松子と同棲するようになり、以来今日まで40年間別居の状態にあり、夫は現在松子と同居して、妻と共同生活を営む意思を確定的に失い、夫婦として円満な婚姻関係を回復する見込みはなく、両者の婚姻関係は既に破綻して久しく経過していること、夫は77歳、妻は73歳の高齢に達し、両者の間に子が生まれなかったことを考慮すると、特段の事情の存しない限り、夫の離婚請求は認容されるべきである。
本件離婚請求が認容されると、妻の最後の自負も奪われるというものであるが、それは、結局、自己の意思に反して離婚が強制的に認められる精神的苦痛にほかならないものである。これは裁判離婚一般に認められる範囲のものであって、殊更これを重視するべきではない。更に、強度の背信性の存する理由として、夫には破綻した婚姻関係の調整ないし整理に真剣な努力の跡がうかがえず、妻は経済的に不安な状態に置かれると主張するけれども、右事情は離婚と同時又は離婚後において請求することが認められる財産分与又は慰藉料により解決されるべきものであるから、殊更に重視するべきではないというべきである。夫は妻に対し別居の際に居住建物を与えてはいるものの、別居後妻に対して生活費を支弁したことがなく、自らすすんで財産的給付をしようとの態度をみせなかったことが認められるけれども、他方、妻も夫に対して別居後積極的に婚姻費用分担の請求をしなかったこともまた事実である。

 

最判平成元年9月7日

前記事実関係のもとにおいては、夫と妻との婚姻は既に破綻しており、夫は有責配偶者というべきであるが、夫と妻の別居期間は、原審の口頭弁論終結時まででも約15年6か月に及び、同居期間や双方の年令と対比するまでもなく相当の長期間であり、しかも、長男は右の時点において既に19歳の半ばに達しているから、両者の間には既に未成熟の子が存在しないというべきである。したがって、夫の本訴請求は、右のような特段の事情のない限り、これを認容すべきところ、妻が離婚によって被るべき原審認定のような経済的・精神的不利益は、離婚に必然的に伴う範囲を著しく超えるものではないというべきであって、未だ右にいう「精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態」に当たらないというほかはなく、また、原審が夫の不誠実な態度の徴表として認定説示している前記事情も、本件の紛争の経緯に照らすと、これを過大に評価することはできないというべきである…。

 

最高裁判所第1小法廷 昭和62年(オ)第721号 離婚請求事件 昭和6年

上告人と被上告人との婚姻については同号所定の事由があり、上告人は有責配偶者というべきであるが、上告人と被上告人との別居期間は、原審の口頭弁論の終結時まででも約一六年に及び、同居期間や双方の年齢と対比するまでもなく相当の長期間であり、しかも、両者の間には未成熟の子がいないのであるから、本訴請求は、右のような特段の事情がない限り、これを認容すべきものである。

 

最判昭和63年2月12日

上告人と被上告人との婚姻については同号所定の事由があり、上告人は有責配偶者というべきであるが、上告人と被上告人との別居期間は、原審の口頭弁論の終結時まででも約二二年及び、同居期間や双方の年齢と対比するまでもなく相当の長期間であり、しかも、両者の間には未成熟の子がいないのであるから、本訴請求は、右のような特段の事情がない限り、これを認容すべきものである。

 

最判昭和62

右事実関係のもとにおいては、上告人と被上告人との婚姻については、夫婦としての共同生活の実体を欠き、その回復の見込みが全くない状態に至つたことにより、民法七七〇条一項五号所定の婚姻生活を継続し難い重大な事由があると認められるところ、被上告人は有責配偶者というべきであるが、上告人と被上告人との別居期間は原審の口頭弁論終結時(昭和六一年一〇月一五日)まででも約三〇年に及び、同居期間や双方の年齢と対比するまでもなく相当の長期間であり、しかも、両者の間には未成熟の子がなく、上告人が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が存在するとは認められないから、冒頭説示したところに従い、被上告人の本訴請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもつて許されないとすべきではなく、これを認容すべきものである。

 

最判昭和62年9月2日

上告人と被上告人との婚姻については五号所定の事由があり、上告人は有責配偶者というべきであるが、上告人と被上告人との別居期間は、原審の口頭弁論の終結時まででも約三六年に及び、同居期間や双方の年齢と対比するまでもなく相当の長期間であり、しかも、両者の間には未成熟の子がいないのであるから、本訴請求は、前示のような特段の事情がない限り、これを認容すべきものである。

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