不動産強制執行の概要
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不動産強制執行の概要(実際のご相談内容に沿って)

父親が亡くなり遺品整理をしていると、父親が弟に対して自宅購入代金のために貸金をしている旨の内容の公正証書正本が出てきました。分割で父の弟から返済がされるとの約束でしたが、途中で返済が滞っているようです。父親の相続人である私と母は父の弟の自宅不動産に対して不動産執行をしたいと思い、弁護士に相談しております。

 

 強制競売を申し立てる場合の要件がいくつかあります。
 まずは、執行力ある債務名義の正本が必要ですが、今回は執行証書(金銭の一定の額の支払いまたはその他の代替物もしくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について、公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの)がこれに該当します。
 しかし、強制執行の申立をするには、単なる債務名義の正本を提出するだけでは足りず、執行文の付された債務名義の正本を提出する必要がありますので、公証人に対して、執行文付与の申立をしなければなりません。

 

 裁判等以外の債務名義については、執行文が必要となります。今回の場合は、債務名義に記載されている債権について承継が生じている場合にその承継の事実を証明したときに付与される承継執行文が必要です。

 

債務名義等の正本または謄本が債務者に送達されていること

 執行証書以外の債務名義のときは裁判所書記官に対して、執行証書のときには公証人に対して、債務名義の送達を依頼し、送達の完了後にそれぞれの機関が作成した送達証明書を取得する必要があります。
 また、民事執行法27条の規定により、条件成就執行文または承継執行文が付与された場合は、執行文及び同条の規定により債権者が提出した文書の謄本が予めまたは同時に債務者に送達されていなければ、強制執行をすることができません(29条後段)。

 

「最終弁済期限の経過」または「期限の利益を喪失」させていることが不動産執行申立の要件となります。

 最終弁済期限の経過は、債務名義の給付が分割弁済の場合には、分割弁済の期限がきた債権について強制競売の申立ができます。弁済期が将来の確定期限まで猶予している場合には、将来の確定期限が到来しないと執行文付与を受けていても強制競売の申立ができません。
 当然喪失の規定を設けている場合は、分割弁済不払いの事実は強制競売申立書の請求債権目録に記載、主張します。
 仮に、請求した場合に期限の利益が喪失すると規定されている場合は、内容証明郵便で請求し、条件執行文の付与を受けなければなりません。

 

 本件において、父の弟が返済できなくなったのは経済的状態が悪化しているからでしょう。とすると破産手続をとるかもしれません。その場合ですが、破産者(父の弟)に対する破産手続開始前の原因に基づいて生じた債権は、破産債権となり、各破産債権者の破産債権は破産手続によらなければ行使できなくなります。
 強制競売申立時において、申立人の提出する不動産登記事項証明書に破産手続開始の登記がある場合には、破産手続開始がなされているという執行障害事由の存在が明らかであるから、申立債権者に対して取り下げが勧告されます。
 一方、競売手続進行中に、破産手続開始を受けたことが明らかになった場合は、強制執行は破産手続開始によりその効力を失います。

 

 民事執行法は剰余主義であり、競売手続開始決定のあった物件の売却基準価額の8割に相当する買受可能価額によっては競売申立人の配当の見込みがない場合は、原則、執行費用と申立人に優先する債権者の債権総額以上の価額による買受申出人がないときには、それ以上の価額で自ら買い受ける旨の申し出をしない限り、開始決定の取消しをされます。

 

 

不動産執行手続の概要は下記の通りです。

①申立書の提出
②競売開始決定及び差押え

・・・裁判所は不動産執行の開始決定をし、差押登記を嘱託した後、開始決定正本を債務者に送付します。

③配当要求の終期の公告及び債権届出の催告

・・・「配当要求の終期」を定め、それを他の抵当権者などの利害関係人に通知するとともに目的不動産に権利を有する抵当権者、公租公課庁に対して債権届出の催告をします。
 差押の登記がされた登記事項証明書が登記官から執行裁判所に送付された後に、物件明細書作成までの手続である現況調査・評価等に要する期間を考慮して配当要求の終期が定められます。配当要求の終期から3ヶ月以内に売却許可決定がされないとき等は自動的に3ヶ月後に延期されますので、配当要求をしようとする債権者は、この終期に関係なく申立をすべきです。
 債権届出の提出が行われます。

④現況調査命令・評価命令
⑤売却基準価額の決定及び物件明細書の作成
⑥入札期日の公告等

・・・入札実施日が決まると、その2週間前以前までにその日を公告し、1週間前までに、競売物件の物件明細書等を、裁判所に備え買受希望者の閲覧に供するか、またはインターネット等でその内容を公開し、物件情報の公開を行います。

⑦売却の実施

・・・売却は期間入札の方法が原則で、売却基準価額の原則2割の保証を積んで行います。最高価買受申出人及び次順位買受申出人が決まります。期間入札等の競売による売却を実施しても適法な買い受けの申し出が無かった場合は、特別売却を実施します。

⑧売却許可決定
⑨代金の納付
⑩債権計算書の提出

・・・代金が納付されると、裁判所は各債権者に配当期日等の通知をし、債権額を計算した書面の提出を求める。

⑪配当金等の支払い

 

配当要求の申立

差押登記前に抵当権設定の登記や仮差押登記等をしていない債権者は、配当要求の終期までに配当要求を申立なければ配当等を受けることができません。
配当要求をすることができる債権者は、①民事執行法25条規定の強制執行を実施することができる債務名義の正本を有する債権者、②競売の開始決定に係る差押登記後に登記された仮差押債権者、③一般の先取特権者です。

 

物件明細書作成

現況調査報告書、評価書等から不動産の売却条件が確定し、超過、無剰余の問題も決着すると、裁判所書記官が物件明細書を作成します。

売却実施処分

内覧

不動産の買受希望者が、売却の実施までに、競売不動産に立ち入って見学することができる。実施については、高額での売却に最も利害関係を有する差押債権者の意思に委ねることとし、内覧の実施には差押債権者の申立があることが必要です。
各回の売却の実施ごとに、裁判所書記官の執行官に対する売却実施処分の時までにしなければなりません。内覧参加申出期間は、その終期が物件明細書、現況調査報告書及び評価書の内容が公開されてから相当の期間が経過した後になるようなしなければならない。

期間入札の公告

法定入札期間は、1週間以上1ヶ月以内。法定開札期日は入札期間の満了後1週間以内の日。売却決定期日は、やむを得ない事由がある場合を除き、開札期日から1週間以内の日。

 

そして、売却決定手続が進められます。

売却できなかった時の手続として再売却が実施されます。
売却許可決定が確定すると、売却許可決定が確定した日から1ヶ月以内に代金納付期限が定められます。買受人は残代金とともに所有権移転登記の登録免許税、抵当権設定登記の抹消登記の登録免許税を納付します。それ以外の必要書類も提出し、嘱託登記が行われます。

配当手続

債権者が複数あり、各債権者の債権および競売費用の全額を弁済することができないときは配当手続を行い、債権者が一人しかいないときまたは売却代金で各債権者の債権と競売手続費用の全部を弁済できる場合は弁済金交付手続を行います。これらは代金が納付された日の1ヶ月以内に日を定められることが原則です。配当期日には、配当を受けるべき債権者、債務者および所有者を呼び出さなければならず、弁済金交付日が定められたときは、各債権者、債務者及び所有者に通知をしなければなりません。配当期日等が定められたときは各債権者に対し債権の元本、配当期日等までの利息、遅延損害金、執行費用の額を計算した計算書を1週間以内に提出するよう催告されます。

債権拡張の可否

強制競売申立書において、一部請求した場合、その一部の債権のみが当該執行手続における請求債権となる。元本のみではなく、附帯債権についても、申立において一定期間を区切った附帯債権の請求をした場合、または請求を全くしていない場合には、配当等の時において拡張できません。
配当表には売却代金額のほか、各債権者について債権の元本・利息その他の附帯債権、執行費用の額ならびに配当の順位及び額を記載しなければならない。
執行費用のうち共益費用となる執行費用(手続費用)は配当の順位は最先順位となり、例えば、手続を進行した申立債権者の申立手数料、申立書類作成・提出費用・登記事項証明書交付手数料、登録免許税、登記嘱託書送付・返送費用、開始決定性本送付費用、現況調査手数料、評価料、売却公示手数料、売却実施手数料、配当期日呼出費用等があります。

 

売却のための保全処分

差し押さえられた不動産であっても、売却されて所有権移転する前までは所有者の使用収益権は保障されているが、不動産の所有者やその他第三者が不動産の価値を減少させる行為をする恐れもあります。

①売却のための保全処分(民事執行55条、188条)
②差押債権者のための保全処分(68条の2、188条)
③買受人等のための保全処分(77条、188条)
④競売開始決定前の仮処分(187条)

売却のための保全処分の申立人は、差押債権者(二重開始決定を受けた後攻の差押債権者を含む。配当要求終期後に申立をした債権者は除外)。
禁止命令・作為命令については「債務者・所有者又は不動産の占有者」が相手方。
執行官保管の保全処分(相手方の使用を許さないもの)、占有移転禁止を伴う執行官保管の保全処分(相手方の使用を許すもの・占有移転禁止の保全処分)については「不動産を占有する債務者・所有者、又は不動産の占有者でその占有権原を差押債権者・仮差押債権者若しくは民事執行法59条1項(188条)の規定により消滅する担保権者に対抗できない者」が相手方。
申立の理由として、理由づける事実を具体的に記載し、かつ、立証を要する事実ごとに証拠を記載しなければならない。相手方及び価格減少行為を明らかにする必要があるが、相手方の特定ができない場合はその特別事情を明らかにしなければなりません。
この価格減少行為には「物理的価格減少行為」・「競争売買阻害価格減少行為」(ただ、正常な賃借権の設定・占有は対象外)があります。
執行権保管の保全処分の決定をするときは、申立人に担保を立てさせなければならない。それ以外の価格減少行為禁止または作為の保全命令、執行官に対する引渡命令・執行官保管の保全処分・占有移転禁止・使用許可の保全処分及び公示保全処分(占有移転禁止の保全処分)の場合は申立人に担保を立てさせるかどうかは任意です(55条4項本文・188)。

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