債権の届出・調査・確定

届出

再生債権者は原則どおり再生債権を自ら届け出ることができるほか,再生債務者が手続開始の申立ての際に提出する債権者一覧表(民再221条3項)に記載がある再生債権は,届出があったものとみなされる(民再225条)。
再生債務者は,債権者一覧表に再生債権の額を記載する際に,後の一般異議申述期間に異議を述べる可能性を留保することができる(民再221条4項・226条1項但書)。
債権者一覧表には,非金銭債権や条件付債権は評価額の金銭債権として,期限未到来の無利息債権は法定利率による中間利息相当額を控除した額の金銭債権として,それぞれ記載される(民再221条5項・87条1項1号・3号)。

 

調査・確定

債権調査の目的である再生債権の確定のもつ意味は,通常再生と個人再生とで大きく異なる。
個人再生においては,事件が類型的に小規模であることから,手続の簡易迅速を重視して,手続内で確定させるのは再生債権者の議決権額のみとし,そのため決定手続限りで確定させるものとして,確定手続を相対的に軽いものとしている。
個人再生における再生債権の調査・確定の手続を経ても,個々の再生債権の存否・額という実体的内容には不可争性が与えられず,再生手続外で通常の訴訟手続により手続内での確定結果とは異なる主張をする余地を認め,むしろ再生手続外での訴訟による確定結果を個人再生における弁済の態様に反映させる可能性を認めているのである(民再232条3項但書)。
以上のような考え方を基礎として,具体的な調査・確定の手続は以下のとおりである。
個人再生においては,再生手続開始決定の際に,一般調査期間(民再34条1項)の代わりに一般異議申述期間を定めて,これを公告する(民再222条1項・2項)。
一般異議申述期間においては,再生債務者および届出再生債権者は,届出のあった再生債権の額について異議を述べることができる(民再226条1項)。
異議が述べられなかった届出再生債権(「無異議債権」)については,再生債権者は届出額で議決権を行使できる(民再230条8項)。
異議が述べられた届出再生債権については,無名義債権の場合には再生債権者が,有名義債権の場合には異議を述べた者が,再生債権の評価の申立てをすることができる(民再227条1項)。
裁判所は,個人再生委員の調査報告をふまえながら(民再223条1項但書・2項2号・227条5項・6項・8項),必要に応じて金銭化・現在化した額を評価額として定め(民再227条7項),評価額の定められた再生債権(「評価済債権」)はその額で議決権を行使できる(民再230条8項)。
この評価手続は,決定手続であり,口頭弁論を行う必要はなく,決定に確定判決と同一の効力は認められず,さらに決定に対して不服申立てをすることも認められていない。

再生債務者財産の調査・確保

個人再生においては,再生債務者は,貸借対照表(民再124条2項)の作成および提出をすることを要しない(民再228条)。
再生債務者財産の確保に関する個人再生手続の特徴の一つは,否認権の制度がないことである(民再238条による第6章第2節の適用除外)。
もっとも,再生手続開始前に詐害行為あるいは偏頗行為があった場合には,これを放置して再生手続を通じた事業あるいは経済生活の再生を可能にするのは適切ではないので,次のような対応をすることになる。
まず,否認権行使を回避するために破産ではなく個人再生の申立てがされた場合には,「不当な目的」によるものとして申立ては棄却され(民再25条4号),破産原因の存在を条件に職権で破産手続に移行することになる(民再250条1項)。
次に,否認対象行為があったことが再生手続開始の後に裁判所に知れた場合には,以下に述べるような理由および手続で,再生計画を成立させることはできず,やはり破産原因の存在を条件に職権で破産手続に移行することになる(民再250条1項)。
すなわち,破産手続が行われて否認権が行使されたとすれば形成されたはずの破産財団から配当できたであろう額が再生債権者に保障されるべき清算価値(民再174条2項4号)であるから,否認権行使を前提としない再生計画が清算価値を下回る額の弁済を定めるものである場合には,個々の再生債権者の最低限の利益を奪うことになるので,決議の手続のある小規模個人再生においては再生計画案を決議に付すことはできず(民再230条2項),再生手続は廃止されることになり(民再191条1号),また再生計画認可の段階で判明した場合には,小規模個人再生・給与所得者等再生を通じて再生計画不認可の決定がされて(民再231条1項),破産原因の存在を条件に職権で破産手続に移行することになる(民再250条1項)。
なお,偏頗的な満足の防止を目的とする点で否認権と制度趣旨を同じくする相殺禁止(民再93条・93条の2)は,形成無効構成にもとづく否認権とは異なり,訴訟における主張を要しないので,個人再生においても適用される。
また双務契約の規律(民再49条ほか)等の再生債務者財産に関するその他の倒産実体法も通常再生と同じく適用される。
さらに,再生債務者が個人事業者の場合には,事業の継続に不可欠な財産に係る担保権消滅許可制度の適用もある。

馬場総合法律事務所

弁護士 馬場充俊

〒604-0024 

京都市中京区下妙覚寺町200衣棚御池ビル2階

TEL:075-254-8277 FAX:075-254-8278

URL:https://www.bababen.work