賃料増額(地代相当賃料の算定)について

地代の増額請求する際の相当賃料の算定方法は?

相当賃料の算定

・「スライド方式」や「利回り方式」が算定賃料を算定しうる唯一の方式であると考えるべきではありません

最判昭和40.11.30判時430.27は、「相当な賃料が何程かは、借地12条所定の諸契機を考慮して、裁判所が合理的に判定すべきものであって、同条に『近隣ノ土地ノ地代若ハ借代』が考慮すべき一契機として明示されている以上、所論のように、従来の賃料にその後における地価高騰率を乗じてのみ算出しなければならないものではない。」と述べています。

最判昭和43.7.5判時529.49は、「借地法12条による賃料増額請求があった場合、裁判所は、同条所定の諸契機を考量し、具体的事実関係に即し、相当賃料を確定すべきであり、その際、原判決の判示するような底地価格に利子率を乗ずる算定方法(所論の土地価格の利回り算定方式)も一つの合理的尺度として使用できるものではあるが、この算定方法に比して本則であるとまで解すべきものではない。」と述べています。

・増額請求権の行使時における経済情勢及び従来の賃貸借関係、とりわけ賃貸借成立に関する経緯などを重視すべきことが指摘され、具体的事実関係に即した単一あるいは複数の合理的な算定方法によるべきだという「総合方式」と呼ばれるものが実務として定着しています。

最判昭和44.9.25判時574.31は、「相当な賃料額を定めるにあたっては借地12条所定の諸事由に限ることなく、請求の当時の経済事情ならびに従来の賃貸借関係とくに当該賃貸借の成立に関する経緯、その他諸般の事情を斟酌して、具体的事実関係に即し、合理的に定めることが必要である。」

・「総合方式」は、「基準」(国土庁土地局地調査課監修・鑑定評価理論研究会編著『解説不動産鑑定評価基準』)の鑑定評価方式とは異なります

基準は「原則として、原価方式、比較方式及び収益方式の三方式を併用すべきであり、対象不動産の種類、所在地の実情、賃料の信頼性等により三方式の併用が困難なる場合においても、その考え方をできるだけ参酌するように努めるべきである。」としています。

 

利回り方式(積算方式)

土地への投下資本額期待利回りを乗じて得られた額に公租公課、管理費などの必要諸経費等を加えた額(積算賃料額)を相当賃料とするもの。

→投下資本額(底地価格)×期待利回り+必要諸経費等=積算賃料

・増額請求訴訟において求められるべき相当賃料すなわち限定賃料(継続賃料)の算定方式として、新たに「賃貸借等の継続に係る限定賃料を求める場合」という項を設け、「当該宅地の経済価値に即応した適正な賃料と実際支払賃料との間に発生している差額部分について、契約の内容、契約締結の経緯等を総合的に比較考量して、当該差額部分のうち貸主に帰属する部分を適正に判定して得た額を実際支払賃料に加減して定めるものとする。」と規定しました(差額配分法)。

 

@投下資本額

=底地価格=土地価格から借地権価格を控除した価格である。
土地価格として更地の価格を採用する裁判例(多数)と建付地としての価格(更地価格に建付減価をしたもの)を採用する裁判例があります。建付減価(土地の更地化のための費用)の幅は普通、更地価格の5〜10%と言われています。
継続賃料としての相当賃料を求める前提としての当該土地の経済価値の把握であるから、それは必ずしも当該土地の最有効使用に即応する経済価値を意味するものではなく、借地契約に定められた使用目的及び方法により減価(契約減価)を加えられるべき場合のある経済価値に他ならないのです。

→(更地価格−契約減価)−借地権価格=底地価格

底地価格×期待利回り=積算賃料

 

A期待利回り

=民法上の5%、商法上の年6%を採用する裁判例が多いですが、利回り率の決定という場面で当該事実関係に即応した修正(契約減価も含む)を加えていこうとする裁判例も中にはあります。

東京高判昭和49.10.29は「期待利回りについて考えてみると、通常右利回りは不動産の取引利回り、公債利回りその他一般の金利水準に照らし、年五分ないし六分とするのが客観的に適正とされるが、元来前記継続賃料については、従来からの賃貸借契約の内容、過去における賃料値上の経緯、権利金、敷金又は更新料等の授受の有無、当事者の生活状態及び力関係等、要するに個別的要因によって大きくその決定が左右されるものであるうえ、一般に急激な地価の上昇、異常な物価の高騰、大幅な租税の増加等経済変動の激しい場合には庶民の生活はこれに追随することができず、したがって賃料も相当低額に抑えられる傾向があり、殊に永年賃貸借が継続した住宅地については特段の事情がない限り、賃料は適正ないし期待される利潤率よりかなり下回るのが実情であるから、…継続賃料の利回りにつき直ちに前期客観的基準に従うことは相当でなく…前期個別的要因…を十分に考慮し、地主と借地人の利益を妥当に調整して、両者の共存できる合理的な期待利回りを決定すべきものである。」

 

B必要諸経費等

=公租公課・管理費用

 

スライド方式

従前賃料に対して消費者物価指数その他の騰貴率(変動率)を乗じて算出された額を相当賃料とします。
・従前賃料が貸主及び借主双方の主観的事情を適正かつ公平に反映して決められていた場合にはスライド方式は合理的・簡便ですが、取引の実際においては当事者の力関係、経済情勢などによりむしろ一方には不公平、不満足な賃料が決められていることが多いのであって、これをいつまでも維持し放置しておくことは妥当ではないのです(大阪高判昭和42.5.23判タ209.203、東京高判昭和52.10.26判時873.32)。

@従前地代

最近時に合意改定した賃料であるという説が多数です。騰貴率を乗ずべき従前地代とは、従来支払われていた賃料額から公租公課等の必要諸経費等を控除した純賃料です。

 →(従前支払地代−当時の公租公課等)×騰貴率+現在の公租公課等=相当賃料

A騰貴率

=当該土地価格の騰貴率とする考え方、消費者物価指数(あるいは地代家賃統計指数)とする考え方があります。

なお、公租公課の倍率方式(約3倍を相当地代とすることが多い)もあります。

 

比較方式(賃貸事例比較法)

収集された借地契約の事例における賃料に必要に応じて事情補正、時点修正を施し、地域的要因、個別的要因の比較をして求められたいくつかの賃料を比較考量して当該土地の相当賃料(比準賃料)を求めるものです。この方式は、客観性においてやや疑問とされることのあるほか、紛争借地と類似の借地事例の少ない地域では使用できないという限界があります。

 

総合方式と差額配分法

「新基準」の差額配分法は、当該借地の経済価値に即応した適正な賃料(支払賃料)から実際支払賃料を控除した差額のうちから貸主に帰属すべき適正な額を求め、この額を従前賃料額に加減したものを相当賃料であるという方式です。
右適正な賃料は利回り方式に主として依拠することとなろうが、これに限定される必要まではなく、スライド方式、比準法などを併用してこれを求め、次いで右差額部分については借地契約締結の経緯、権利金、更新料の授受の有無、経過期間、契約内容の変遷など貸主借主双方の事情を総合的に考慮して公平の原則に基づいて貸主に帰属すべき部分を判定すべきでしょう。

 

 

 

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弁護士 馬場充俊
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