「抗告人(夫)は〇〇株式会社の過半の株式を有する経営者として、実質的に自らの報酬額を決定できる立場にあったものと推定することができ、本件における2度に渡る抗告人の報酬の減額は、相手方(妻)が婚姻費用の支払いを求める本件調停の第1回期日の前後及び、本件調停が不成立となり原審判手続に移行した直後に行われていることに照らすと相手方に対する婚姻費用分担額を低額に抑えようとの目的でされたものと推認するのが相当であるから、抗告人の相手方に対する婚姻費用分担額は、原審判のとおり、上記各減額前の抗告人の収入を基礎として算定するのが相当である。」
(大阪高決平成19年3月30日)
給与所得者でも,実質的に個人事業と変わらない規模の会社の役員の場合,その給与額(役員報酬額)は恣意的に操作されている可能性があります。離婚紛争発生後に,それまでの役員報酬額と比較して極端に役員報酬が減額されている場合は,養育費を低く抑えるために操作されている可能性が疑われます。
?? 婚姻費用や養育費の算定について,公的資料では収入が適正な収入が認定できない場合,厚生労働省の作成している統計資料「賃金構造基本統計調査」(賃金センサス)に基づいて認定される場合があります。例えば,平成30年の,男性,大学・大学院卒業,40歳〜44歳の平均賃金は719万9200円とされており,このような統計上のデータに基づいて収入を認定し,婚姻費用や養育費が算定されることがあります。